Saturday, June 1, 2019

DIYショップ B&Q社(英国 イーストレイ) 1998.09.15

<環境倫理をもった数少ないDIYショップ>

リサイクルショ ツプなどに代表されるReuseの発想から生まれた環境ビジネスと同様に、不用・不良品を修理・修繕するRepairという発想のもとに生まれた環境ビジネスが脚光を浴びつつある。その代表格がDIY(Do It Yourself)ショップ。 日本でもDIYショッブの数は右肩上がりに増加し、97年の時点で3430店舗を数えるほどの活気を見せている。 しかし環境を軸とした経営を行なうショップは世界的に見てほんの一握りなのが現状だ。
その中で、DIYの発祥の地とされる英国においてチェー ン展開をするB&Q社は、
DIYショップとしての環境倫理を持つ数少ない企業のひとつである。

「すべての製品は環境負荷を与える」

英国のサウスハンプトンで69年に誕生したB&Q社は、 90年に 自社の環境行計画を制定したのを皮切りに、環境配慮型企業としての存在をアピールし始めた。 同社が考える環境倫理には 「すべての製品は環境負荷を与え る」 という、環境問題に対する悲観的な認識が前提にある。
同社が扱う製品のアイテム数は4万点にもおよび、それらの生産や廃棄にかかる環境負荷はどう足掻いても避けられない現実であることを理解していたからだ。通常業務において環境保全活を行なうために、 同社は製品がどれだけ環境負荷を与えるか目を配る必要があった。そこで同社は、環境政策の焦点を、同社が小売する製品の品質管理に当てた。

同社は91年にスタートした環境政策の一環として、 製品の調達先、 つまり供給業者の業態を最初に調査した。DIYショッブだけに扱う製品も多種多様で、 製品に間接 的に絡む業者も多数ある。 大変な労力を費やしたが、契約している供給業者の環境に対する考え方を正確に把握することができた。 環境配慮型製品への改良方法など も、 面談やセミナー、電話などといったコミュニケーションの場で供給業者と幾度となく論議していった。

また化学薬品に汚染された工場や、幼い子どもたちが働かなけかなければならない発展途上国の現状も直接確認し、発展途上国における製品加工現場の労働環境や雇用条件の改善も環境配慮を視点に置いた品質保持の必要条件であると同社は認識した。

これらの過程を踏まえ、環境、安全性、倫理、労働などの観点をすぺて製品の品質に集約した基準を作り、 同社は95年に環境査定制度 「QUEST」(the QUality of a product includes its Ethics and SafeTy) を制定した。現在600社におよぶ製品供給業者は、 この査定をクリアした上で同社と契約を結び、 取引業務を行なっている。この制度は供給業者とのコミュニケーションなくしては成し得なかったといっても過言ではない。

B&Q社 Eastleigh, Hants, UK

「製品の評価が契約に反映」

また同社の商品売上高のおよそ20%は木材関連商品で占められており、その供給業者は40カ国、160企業にもおよぶ。そこで同社は2000年までに扱うすぺての木材製品を、世界的な森林管理組織であるForest Stewardship Council(FSC)が認定した窓ので取り揃えることを決定した。 これにより、 適切に管理された森林から生産された木材の品質基準を明確に把握し、 また外部にも公表できるようになったのである。 一般消者とのコミュニケーションも大切な業務活のひとつである。環境汚染やリサイクルの簡易性、 廃棄物削減の観点に立った商品選択など、 さまざまなアドバ イスを店頭で行なうのだが、ここでの消者の商品に対する声がそのまま 「QUEST」 における品質基準に影響されてくる。 商品が環境を配慮していなければ、環境配慮を無視した供給業者と考えられ、 業者に与えられる契約条件も容赦なく悪くなるからだ。 供給業者は当然このような事態を避けるため、製品の品質管理に積極的に取り組むことになる。 その結果、同社が販売する製品の品質は一定のレべルを維持することができるわけである。また98年には環境活の成果を織り込んだプログレスレポートを発行 し、 社会に対して明確に情報公開ができるまでに成長した。B&Q社は、今や店舗数238、年聞総売上高1憶6400万ポンドを誇る英国一のDIYショップチェーンとなった。

消費者の誰もが、製品が何処で、誰の手で、何を原料に生産されたのか知る権利を持っている。グリーンコンシューマリズムが社会で台頭してくれば、DIYショップのような多多様な製品を扱う小売業は、消費者に対して明確に説明できる能力を持っことが最低限の条件となるはずだ。B&Q社ほどの製品に対する探求力をもってすれば、これから日本でもDIYショップが環境ピジネスを引導していく可能性は大いにある。

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