都市鉱山は希少金属の宝庫 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催にあたり、日本の大会組織委員会は 「都市鉱山」から採取した金・銀等の希少金属を各メダルに再利用いう試みを4月か ら始めるも遅々として進んでいない。 「なぜ、何だろう?」 こうした希少金属の再資源化は今に始まったことではない。13年に使用済み電子機器 等を対象にした「小型家電リサイクル法」が施行されるも、各使用済み製品の各回収 義務のないため回収率は15年度で10%足らず。メダル再利用をキッカケに都市鉱山の 再資源化…夢のまた夢という現況とは。。
●都市鉱山とは 都市鉱山とは、スマートフォン、ガラ携、ゲーム機等のIT製品や小型家電製品にレア メタル(希少金属)や有価貴金属等が含まれている。 それら使用済み製品を「採掘可能」な資源と考えて、都市に埋蔵されるひとつ鉱山と する概念。 都市部で排出された不用になった電気・電子機器をリサイクルして、そこから貴金属 やレアメタルを取り出し再利用するもの。1980年に南條道夫(当時東北大学選鉱製錬研 究所教授)らによって提唱された。 株価の低迷での「金本位」、東京オリンピック・パラリンピックのメダルへの再利用等 の機運もあり、金・銀等の貴金属の価格が上昇するに伴い、再び注目されている。
●世界有数の金銀の所有国 物質・材料研究機構の試算では、日本の都市鉱山には金が1800㌧と世界の埋蔵量の16% 、銀が60000万㌧で約22%が眠っている。金銀ともに埋蔵量は世界一だ。 ちなみに銅は3800㌧で第2位だ。それぞれが世界の需要に対して約3年分は充分に供給で きる量に達する。 その他リチウム7年、白金5年、レアアース2年分は優に供給可能だ。 この都市鉱山の埋蔵量からみると、日本は世界有数の隠れた「資源国」なのだ。しかし 未利用のまま放置状態が続く。 資源小国・日本として、排出量は世界トップクラスの食品ロスと同様に、今一度考え直 す命題のひとつだ。
●海外での資源獲得よりも再資源化の道を パソコン、スマホやゲーム機等に含有される金は0・03%。一方、自然界の鉱石1㌧から の採取量は3~5%だと言われている。その割合は0・0003%程度。枯渇性の高い他 の金属も鉱石からの採取量も次第に減ってきている。取り過ぎて含有量の多い鉱石が減少 しているからだ。 そんな現状を踏まえれば、含有量が確実な都市鉱山の有効利用へおのずと目が向く。 しかも都市鉱山なら、大規模な採掘での自然破壊、採取時の有害物質による環境への悪影 響、地域住民の公害・健康被害の抑制に繋がる。しかし産業界や学者の一部から紋切型の 声を聞く。「コスト面では天然鉱石には勝てない」と。 実際のところ、金銀その他のレアメタル回収のリサイクルコストを下げる技術は日進月 歩で進んいる。 環境ビジネスでは、「リサイクルは廃棄物を材料とした製造業」と視点からみると、都市 鉱山からの金属回収を業とする成功事例も少なくない。横浜金属を先達として、今は田中 貴金属も本格参入して事業所の裾野を広げている。
●各メダル全部の供給は空疎 2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委は4月に「都市鉱山からつくる!みん なのメダルプロジェクト」を東京都始め、全国の自治体を窓口にスマホ、ガラ携、ゲーム 機、パソコン等電子小型家電の回収を始めた。リサイクルした金、銀、銅でメダル5000個 すべてを作るのが目標だ。掛け声だけの取り組みに終わるのでは、と言う危惧がある。 2001年家電リサイクル法施行、現在、家電リサイクル率52%。2013年小型家電リサイクル 法施行、現在、同リサイクル率10%以下と言うのが実情。 国としてはオリンピック・パリンピックの大イヴェントに相乗りして、進まないリサイク ル率を一気に高めたいところだが、ここでも他人任せの「自主的な」回収システムにお任 せなのだ。結果として都市鉱山の小型家電は資源として海外へ流出したり、自治体に引き 渡される過程で業者に高い値段で流されたり、リサイクル費用後払い(リサイクル費用逃 れ)ゆえの不法投棄されたりしている。要は、普通の経済ルールでモノが動いている。
●減容・減量化が課題 出たものをどうするか?と言う対処療法でなく、都市鉱山が誕生しないように最初からヴァージン資源を極力使わないルール作りが求められている。変わらない消費者の果てしない 欲望をくすぐる新製品が市場を賑わす。資源小国であり、しかも将来世代の持続可能な社 会の実現を考えるならば、将来世代が享受すべき資源の先取り、資源浪費は回避の発想が 必要ではないのか。
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