2024年8月19日月曜日

トレードオフのないセキュリティはない

セキュリティに関する議論の中で、「トレードオフ」の概念が非常に重要です。先日、商学部出身の専門外の人にセキュリティについて話した際、トレードオフについて考える機会がありました。一般的に、トレードオフとは、ある選択肢を取ることで他の選択肢を諦めなければならない状況を指します。商学や経済学の分野では、限られたリソース(例えば資源、時間、労力)をどのように配分するかがトレードオフの本質です。

経済学での需給均衡や、情報科学での重み付けがトレードオフの典型例です。これらの分野では、リソースの最適な配分が求められ、その結果、コストを最適化するトレードオフが生じます。例えば、資源、時間、労力を3次元の座標軸で考え、特定の局面でコストを最適化するという考え方が挙げられます。

トレードオフは様々な要因を最適化することが求められます。リソースをどう最適化するかは経済学の話題だけでなく、セキュリティの文脈でも重要です。例えば、テロリストが低コストで大規模なダメージを与えたケースでは、攻撃側が非常に効果的なトレードオフを行ったと言えます。彼らは組織を多層的に区画化し、計画を厳密に遂行することで、効果を最大化しつつコストを最小限に抑えました。

一方、セキュリティ対策を講じる側でも、同様にトレードオフが求められます。リスクを最小限に抑えつつ、コストを最適化する必要がありますが、その効果を測定することは非常に難しい課題です。現代のセキュリティやリスク管理では、確率は低くても影響が大きい事象に対して適切にパラメーターを割り振る必要があります。

例えば、飛行機事故と自動車事故のトレードオフを考えると、誤った選択をすると全体のコストが増え、結果として死者数が増加する可能性があります。これを防ぐためには、リソースをどう最適化するかを慎重に検討する必要があります。

また、セキュリティの実践では、鍵の管理や歯磨きの時間といった日常的な例でもトレードオフが存在します。コストを最小限に抑えつつ、全体の効果を最大化することが求められます。これを他人に任せるのではなく、自ら行うことで初めて効果が得られることが多いです。

さらに、セキュリティ対策においては、感覚と実態のズレが問題となることがあります。守られているという感覚があっても、実際にはそうではないことが多々あります。この点は、医療の分野にも似た問題があります。セキュリティとは何かを深く理解し、それを日常生活や組織運営に取り入れることが求められます。

最後に、セキュリティ対策を最適化するためには、守るべき資産、リスク、コスト、効果といった要素を洗い出し、適切にトレードオフを行うことが重要です。最適化のステップを踏むことで、セキュリティ対策は効果的に実行され、リスクが最小限に抑えられるでしょう。

結論として、セキュリティにおけるトレードオフは避けられないものであり、その最適化が求められます。効果的なセキュリティ対策を実行するためには、リソースをどう配分するか、どのようなリスクを許容するかを慎重に検討し、最適な選択をすることが不可欠です。

5段階評価法

トレードオフが最適化できること、そして良いトレードオフと悪いトレードオフがあるということです。本書では、5段階の評価法を踏むことでトレードオフを改善できると述べています。ここでは、その5段階を一つずつ解説します。

まず第一のステップは、「守るべき資産は何か」を明確にすることです。これがはっきりしないと、セキュリティの効果が判断できません。守るべき資産を決めないと、そのダメージを測ることができないからです。定量的に考えると、どれくらいの損害が発生するかを把握するために、どの資産を守るのかを明確にする必要があります。例えば、テロリストの攻撃から守るべき対象が飛行機なのか、空港なのか、それとも輸送システム全体なのかで対策は異なります。

次に第二のステップでは、その資産がどのようなリスクにさらされているのかを洗い出します。これを「座標軸を洗い出す」と考えると、守るべき資産を原点とし、リスク要因を座標軸として捉えることができます。この段階で、金額や人命といった具体的なリスク要因を特定し、それに応じたパラメータの割り振りが可能になります。

第三のステップでは、セキュリティ対策によってリスクがどれだけ低下するのかを評価します。リスクとは、攻撃や脅威が発生した場合の損害額であり、確率も関わっています。この段階では、どれだけリスクを最小化できるかを考える必要があります。

第四のステップでは、複数の座標軸と標高を考慮し、セキュリティ対策によってもたらされるリスクを評価します。通常、複数の座標軸があり、それぞれに標高が決まりますが、セキュリティの問題は複雑であり、いくつかの標高が同時に決まることもあります。また、波及効果があり、対策によって逆にリスクが高まることもあるため、その測定は専門的であり、上級者向けの作業となります。

最後に第五のステップでは、ステップ1から3までの内容とステップ4を組み合わせ、最終的にどれくらいリスクが低下するかを評価します。そのためにどれくらいのコストがかかるのか、またリスクをどれだけ下げるかとコストのバランスを取ることが求められます。リスクを下げすぎるとコストが増大するため、最適化を行うことが必要です。

最終的には、最適なトレードオフの点が見つかるはずです。この最適化されたトレードオフとは、コストが最小化され、リスクが十分に低下した状態を指します。多層的な座標軸を考慮しつつ、この5段階を踏むことで、最適なトレードオフが導き出されるというのが本書の結論です。 



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