Wednesday, April 30, 2025

廃油の不法投棄-伊勢湾・瀬戸内海-2024年10月

廃油の不法投棄-伊勢湾・瀬戸内海-2024年10月

2020年代に入り、日本各地の沿岸部、特に三重県の伊勢湾や瀬戸内海、東京湾で廃油の不法投棄が依然として深刻な問題となっています。伊勢湾では、年間推定2000トン以上の廃油が不法に投棄されており、特に漁業に対する影響が深刻です。廃油が海面に流出すると、油膜が形成され海洋生物への酸素供給が遮断され、特にサンゴ礁や貝類、魚類が甚大な被害を受けています。瀬戸内海でも同様の状況が発生しており、地元の漁業組合による調査では、約30%の水産資源が減少していることが確認されています。

また、廃油による海洋汚染は、漁業従事者や地元住民の健康にも悪影響を及ぼしています。廃油に含まれる有害物質、特にベンゼンやトルエン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)などは発がん性があり、これらが海洋生物を通じて人体に蓄積される可能性があります。近年、沿岸部住民の間で皮膚疾患や呼吸器系の病気が増加しており、一部では、肝臓疾患やがんの発症リスクが高まっているとの報告もあります。伊勢湾周辺では、特に漁業従事者の健康状態に注意が払われており、健康被害のリスクが社会問題化しています。

この問題に対し、環境庁や地方自治体は監視体制を強化し、2023年には東京湾での不法投棄に関連する200件以上の摘発が行われました。特に、産業廃棄物を取り扱う中小企業がコスト削減のために廃油の違法投棄を行うケースが増加しており、違法投棄が発覚した際には1件あたり最大で5000万円の罰金が課されています。しかし、監視が行き届かない地域や深夜に行われる不法投棄が続いており、抜本的な対策が求められています。

一方、大手企業もこの問題に対して積極的に取り組んでいます。JXTGエネルギー(現ENEOS)は、廃油の適正処理を行うシステムを拡充し、廃油回収率を向上させるプロジェクトを開始しました。2022年には、ENEOSが中心となって全国の主要港に廃油処理施設を設置し、年間1万トンの廃油を回収・処理する計画を発表しました。また、シンガポールなどアジア諸国でも、日本企業との連携により同様の廃油処理技術が導入され、環境対策が進められています。

環境省は、今後5年間で全国の港湾に廃油監視カメラを設置し、違法行為を抑制する施策を導入予定です。2024年時点での回収率は前年に比べて15%増加し、特に伊勢湾では廃油投棄が10%減少していますが、依然として深刻な状況が続いており、さらなる対策強化が求められています。

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