星の彼方から笑いを紡ぐ――水野英子とトキワ荘の青春（1950年代末）

星の彼方から笑いを紡ぐ――水野英子とトキワ荘の青春（1950年代末）

1950年代末、日本は復興から高度成長へ歩み出していた。東京・椎名町のトキワ荘には、手塚治虫を慕う若き漫画家たちが集い、未来を信じて生きていた。水野英子もそのひとり。少女漫画にロマンと恋愛を吹き込み、ジャンルの扉を開いた彼女は、石森章太郎や赤塚不二夫と合作を重ね、熱い日々を過ごした。

トキワ荘は狭く、貧しく、しかし誰よりも自由だった。ハレンチな話題が飛び交い、旧い道徳に風穴を開ける若者たちの笑いが、時代を突き動かした。無邪気な王様・石森章太郎は、ピンポンダッシュや原稿のすり替え、偽の編集者電話と、数々のイタズラで仲間たちを翻弄した。だがそれは、ただの悪ふざけではない。閉塞と緊張のなかで、笑いこそが生きるための武器だった。

やがて彼らは、日本の漫画、アニメ、芸能文化を新たな次元へ押し上げる。トキワ荘の笑いと闘争、それは、星の彼方から未来を紡ぐ、若者たちの静かな革命だった。