映画と性表現――文芸とポルノの狭間(昭和40〜50年代)
1960年代後半から70年代にかけて、日本映画は転換期を迎えていた。テレビの普及により観客は映画館から離れ、大手映画会社の経営も傾いた。そんな中で登場したのが、ピンク映画やロマンポルノだった。前者は低予算で製作され、後者は日活が芸術性も意識して送り出した性的描写を含む映画群である。
だが、これらを見た若者たちの眼差しは単なる好色ではなかった。そこに孤独や不安、自分の現実との対話を見出した者もいた。「性」の実態に触れることができない時代、映画館は匿名性の高い"接触の場"だった。親や学校、社会から隔てられたところで、彼らは文字どおり"世界"に出会った。
また、これらの映画には日本芸能の「見世物」としての伝統も息づいていた。芸者や踊り子が舞台で魅せるように、スクリーンの中の女優たちは"演じる"という文脈の中で観客と対峙したのである。性描写が猥褻か芸か、その曖昧な境界を渡ることで、観る者は自らの倫理観と欲望に向き合った。
このような映画体験は、昭和40〜50年代の若者たちにとって、"知識"でも"娯楽"でもなく、"通過儀礼"に近いものであった。ポルノとは単にいやらしいものではなく、「世界をどう見るか」の入口でもあったのだ。
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