Monday, September 15, 2025

「益田に灯る“バイオマス循環”の構想」―2002年前後の視点から

「益田に灯る"バイオマス循環"の構想」―2002年前後の視点から

2002年前後の日本では、地球温暖化防止と循環型社会の構築が重要課題として掲げられ、エネルギー政策も化石燃料依存からの転換を模索していた。京都議定書が1997年に採択され、2002年には批准が進む中で、温室効果ガス削減目標の達成に向けた再生可能エネルギーの導入が現実的な政策テーマとなっていた。同時に地方では、人口減少や高齢化による農林業の停滞と耕作放棄地の増加が顕著で、地域資源をいかに活かすかが切実な問題だった。

こうした状況を背景に、島根県益田市全域において「廃棄物→生物資源活用特区」が構想された。これは、木質系廃材や林地残材、畜産由来の家畜ふん尿などを単なる廃棄物とみなすのではなく、エネルギーや肥料として循環利用するために、既存規制を緩和しようとする取り組みであった。具体的には、廃棄物処理法や肥料取締法などの規制を対象に、バイオマスの燃料化や堆肥化を柔軟に進める枠組みが提示された。

当時の益田市は、農林畜産業が基盤である一方で、人口減少と過疎化が進行しており、地域経済の持続性確保が課題であった。そのため、この特区は単なる環境対策ではなく、地場産業と結びついた地域再生策としても期待された。木質バイオマスによる熱供給や畜産バイオマスによるエネルギー変換は、地域エネルギーの自給を促し、化石燃料依存からの転換を進める可能性を秘めていた。

益田市の構想は、廃棄物を"負担"から"資源"へと転換する象徴的な事例であり、循環型社会の実現に向けた先駆的な挑戦であった。地方からのエネルギー転換の実験として、この特区は全国的にも注目されたのである。

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