町人文化と太鼓持ち―江戸中期の間を操る芸（18世紀中葉）

町人文化と太鼓持ち―江戸中期の間を操る芸（18世紀中葉）

江戸中期、経済の主導権が武士から町人へ移り、商人たちの社交文化が成熟した。座敷遊びの場では、客と遊女、芸者の間をつなぐ存在として太鼓持ちが欠かせなかった。彼らは空気を読む名人であり、洒落や即興の唄で沈黙を和らげ、緊張を笑いに変える芸を磨いた。太鼓持ちは単なる道化ではなく、場の呼吸を操る"間"の演出家であった。江戸人が重んじたのは、言葉を尽くすよりも余白と沈黙で情を伝える美学であり、太鼓持ちはそれを体現する存在だった。18世紀後半には幇間（ほうかん）と呼ばれ、上方文化と融合し、座敷という舞台で人間関係を調律する職人芸へと進化する。彼らは笑いをもって秩序を保ち、沈黙すら芸に昇華した。太鼓持ちはまさに江戸の夜の影を照らす"笑いの芸術家"であった。