門回りの唄と亀女踊りの笑い―屋久島・昭和の民俗風景(1950年代)
昭和三十年代の屋久島は、まだ自然と共同体の結びつきが濃い時代であった。正月七日の夜に行われた「門回り」は、子どもたちが各家を訪ね、祝い歌を歌いながら地域の再生を祝う風習である。「いおうてもおす、恒例の門松、今年は木戸の松が栄えた」と歌い、餅や祝儀をもらうその光景には、生活の喜びと共同体の絆が息づいていた。著者はその最中に肥壺へ落ちるという失敗談を持ち、それが後に「亀女踊り」と結びついて語られる。亀女踊りでは亀(カメ)と甕(カメ)を掛け合わせた言葉遊びがあり、男女の駆け引きを笑いに変える島の知恵が表れている。これらの風習は、子どもが地域社会へ参加する通過儀礼であり、自然の恵みと人の関係を再確認する祭りでもあった。貧しさや苦労を笑い飛ばす「共同のユーモア」
は、自然と共に生きる屋久島の民俗的知恵そのものだった。
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