Wednesday, October 29, 2025

祭のあと―佐渡島の神と舞踏の夜(1973年頃)

祭のあと―佐渡島の神と舞踏の夜(1973年頃)

1973年頃、佐渡島での能の奉納祭が描かれる。夜を徹して神前での舞が終わると、観客はすでに帰り、神主が独りで舞台の片付けを始めていた。その静かな場に、山から降りてきた老人が現れ、「もう神さま、お帰りかな」とぽつりと呟く。祭が終わることは、神が帰るという感覚をともない、神聖な時間と日常が交差する瞬間に立ち会っているような、繊細な感性がにじむ。この言葉には、神が「在る」とも「居なくなる」ともいえぬ、流動的な存在であるという日本独特の信仰観が滲み出ている。1970年代は都市化と近代化のただなかにあり、こうした民俗的な信仰や祭礼は次第に姿を消しつつあった。そのなかで記録されたこの場面は、神と人との親密な距離感、祈りと暮らしの織りなす風土的な世界を静かに照らしている。神と�
��どこか彼方にいるものではなく、舞や声を通していま此処に立ち現れ、また闇に還っていく存在なのだ。

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