Saturday, October 4, 2025

古今亭志ん朝の姿勢 ― 1970年代以降の落語再生と伝統の継承

古今亭志ん朝の姿勢 ― 1970年代以降の落語再生と伝統の継承

古今亭志ん朝(一九三八~二〇〇一年)は、父・志ん生の存在を背にしながら独自の芸風を築いた落語家である。大阪・島之内寄席など関西の舞台に積極的に出演し、新作落語にも挑戦する姿勢は、当時の落語界に新たな風を吹き込んだ。1970年代はテレビ普及による寄席文化の衰退期であり、寄席は観客を失いかけていたが、志ん朝は古典と新作を両立させることで観客を呼び戻し、落語の現代的価値を示した。

父・志ん生の芸が庶民的で奔放であったのに対し、志ん朝は気品ある語り口と端正な所作を持ち味とし、都市生活者の洗練された嗜好に合致した。高度経済成長期を経て社会が成熟に向かうなかで、志ん朝の芸は新たな時代の文化的ニーズに応え、落語を知的で品格ある芸能へと押し上げた。

さらに志ん朝は、古典を大切に守りつつも新しい題材を積極的に取り込み、観客に常に新鮮な印象を与え続けた。その高座は、伝統と時代性の融合を体現し、1970年代以降の落語人気を再び盛り上げる中心的存在となった。志ん朝の姿勢は、落語を過去の遺産に留めず、現代に生きる芸能として未来に繋ぐ役割を果たした。

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