風をまとう女たち―1970年代、桐島洋子が開いた「自立する女」の時代

風をまとう女たち―1970年代、桐島洋子が開いた「自立する女」の時代

1970年代の日本は、高度経済成長の終焉とともに、社会の価値観が大きく揺れ動いた時期だった。政治・学生運動が一段落し、個人の生き方や性の自由が強く意識されるようになる中で、桐島洋子の登場は時代の空気を象徴していた。彼女はエッセイスト、ルポライター、そして作家として、女性が社会の中で"自分の声"を持つことの大切さを語り続けた。

1970年代初頭、桐島は海外取材や育児を通じて女性の生き方を再定義する文章を数多く発表した。その筆致は、同時代の女性誌『アンアン』『ノンノ』が作り出した"新しい女"像と共鳴し、自由恋愛・シングルマザー・キャリアウーマンといった概念を日常語として定着させた。彼女の著作『聖母たちのララバイ』は、母でありながら一人の女性として生きる葛藤と希望を描き、従来の"良妻賢母"観を超えるメッセージとして支持を集めた。

当時の社会は、ウーマン・リブ運動が都市部の若い女性を中心に広がり、桐島洋子の発言はその文脈の中で受け止められた。彼女は運動的言辞ではなく、生活者のリアルな視点から「自由とは何か」を問い直した。テレビ番組やエッセイで見せる率直な語り口は、男性社会の中で息苦しさを感じていた女性たちに、軽やかで現実的な指針を与えた。

桐島の言葉には、戦後の道徳観を引きずる昭和社会に対する静かな反抗があった。彼女が描いた「自立する女性」は、単に男性に依存しないという意味ではなく、"自分の感情を引き受けて生きる"という成熟した主体性の象徴だった。1970年代の彼女の存在は、女性解放を声高に叫ぶよりも、日常の選択を通じて自由を体現するという、日本的フェミニズムの一つの形を示していたのである。