Friday, October 24, 2025

トヨタ、バンパーのリサイクル実用化 —1995年・自動車産業の環境革新—

トヨタ、バンパーのリサイクル実用化 —1995年・自動車産業の環境革新—
1995年6月、トヨタ自動車は、販売店から回収した使用済みバンパーを粉砕・水分解処理し、新車用のバンパー素材として再利用する技術を確立した。当時の自動車産業では、生産工程でのリサイクルは進んでいたものの、廃車部品の再資源化はほとんど手つかずの分野であり、この「バンパーからバンパーへ」の循環システムは国内初の試みであった。トヨタは月間約11万本もの樹脂バンパーを回収し、塗装膜を除去して再利用する工程を量産レベルで実現した。
1990年代前半は、「地球温暖化防止」や「廃棄物リサイクル」が国際的な課題として注目され、日本企業の環境対応が問われ始めた時期である。1992年のリオ地球サミット以降、「持続可能な開発」という理念が産業界に浸透しつつあり、トヨタは自動車製造の全工程で環境負荷を減らすことを企業戦略の中核に据えた。
この取り組みは、後の「エコカー」開発やゼロ・エミッション工場構想の出発点ともなった。単なる廃棄物削減策ではなく、素材循環を視野に入れた製品設計思想の転換であり、リサイクルを「企業の社会的責任」として定義づけた先駆例だった。1990年代半ばのトヨタの挑戦は、日本の製造業全体に「環境と経済の両立」を具体的に示す実例を与えたのである。

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