ナショナルトラスト運動とマルクス資本論における公共財―釧路湿原にみる所有の超克と共有の倫理 1996年3月
ナショナルトラスト運動は、市民が自ら資金を出して土地を買い取り、自然を「社会全体の共有財」として守る実践であり、マルクス『資本論』における「共有的生産関係」の理念と響き合う。マルクスは自然を「人間の無償の生産条件」と位置づけ、資本による私有化を社会的疎外と批判した。こうした思想は、現代の釧路湿原におけるメガソーラー問題に通じる。湿原は国際的な保全地であるにもかかわらず、再エネ開発の名のもとに土地の再商品化が進み、生態系が脅かされている。これはマルクスが予見した「第二の囲い込み」であり、共有財が再び資本の支配下に置かれる現象である。釧路の住民や研究者が示す保全運動は、ナショナルトラストの精神を現代に継承するものであり、自然を守る行為を「地域の権利」として
再定義している。自然を未来世代に引き渡す責任こそが、資本主義的所有を超える新しい公共倫理の基盤である。
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