Saturday, October 11, 2025

黎明へ向かう階級の行進―資本論・19世紀

黎明へ向かう階級の行進―資本論・19世紀

マルクスが描いた歴史的必然とは、資本主義の矛盾と闘争を通じ、最終的に社会主義・共産主義へ移行するという運動である。資本主義は、資本の蓄積と集中、剰余価値の吸収、危機の再発を通じて、貧富の分極を深め、階級対立を鋭化させる。こうした条件の下で、労働者階級(プロレタリアート)は自己の解放を模索し、支配階級を打倒することが歴史の論理になる。マルクスは、この過程を単なる政治変動ではなく、物質的生産力と生産関係の変化という歴史的唯物論の法則と見なした。

十九世紀の社会情勢は、この理論を支持する傍証を無数に示した。工業化と技術革新は生産力を飛躍的に高め、巨大工場と資本集中を促した。一方、労働者の賃金は抑制され、生活条件の格差が拡大。政治運動としては、1848年革命、国際労働者協会、社会主義・共産主義運動の興隆が顕著であった。

このような階級闘争と制度変革の連鎖の先に、マルクスはプロレタリア独裁という中間段階を想定し、そこから国家の消滅、階級差別の消滅を経て「自由な人々の共同体」へと至るヴィジョンを描いた。しかしマルクス自身は、未来社会の具体的制度設計には慎重であり、あくまで変革を導く歴史的運動の法則性に重点を置いた。

No comments:

Post a Comment