資本が雪だまになる日―資本論・19世紀
資本の蓄積とは、貨幣が商品を介してより多くの貨幣へと循環する運動であり、剰余価値を再投資することで資本が自己増殖する過程である。マルクスはこの運動が市場の偶然ではなく、資本の構造そのものに内在する法則だと指摘した。競争は効率の悪い資本家を淘汰し、勝者の資本が集中・中央集権化していく。十九世紀の産業革命後期にはこの傾向が顕著となり、英国では有限責任法や会社法が資本集積を後押しした。出資者の責任を限定する仕組みが多くの資本を動員し、巨大企業の形成を可能にしたのである。米国ではスタンダード・オイルが国内市場を独占し、独占資本への反発から一八九〇年にシャーマン反トラスト法が制定された。ドイツではユニバーサルバンクが重工業を金融面から統制し、企業間の結びつきを強
化した。こうした流れの中で資本は雪だまのように膨張し、少数の資本ブロックが経済と社会を支配する構造が形成された。これこそがマルクスが描いた資本主義発展の必然的帰結である。
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