Sunday, October 19, 2025

熊本県西合志町におけるサツマイモ残さ活用の歴史(2000年代~2020年代)

熊本県西合志町におけるサツマイモ残さ活用の歴史(2000年代~2020年代)

### 2000年代:研究の開始と基盤構築
2004年、熊本県西合志町を拠点とする九州沖縄農業研究センターが、サツマイモ残さの活用を目的としたゼロエミッション型システムの研究をスタートしました。このプロジェクトでは、焼酎かすからポリフェノールを抽出する技術や、サツマイモの葉茎を家畜飼料として利用する方法を開発。霧島酒造の協力を得て、同社工場にミニプラントを設置し、実証実験を実施しました。この段階では、年間数千トンに及ぶ残さの有効利用を目指して研究が進められました。

### 2010年代:商業化と活用範囲の拡大
2010年代に入ると、研究成果が実用化段階に移行しました。2012年には、焼酎かすから抽出したポリフェノールが食品添加物や化粧品原料として商業化され、年間売上10億円を突破しました。さらに、サツマイモの葉や茎を活用した家畜飼料は、熊本県内の畜産農家で広く採用され、年間8000トンを超える供給体制が整いました。

また、2017年にはバイオマス発電技術が導入され、宇城市に設置されたバイオガス生成プラントが地域循環型エネルギーの供給を開始しました。このプラントでは年間1200トンの残さを処理し、約500世帯分の電力を供給する成果を上げました。これらの取り組みは、環境負荷の軽減と地域産業の発展に寄与しました。

### 2020年代:さらなる技術革新と国際展開
2020年代には技術が一層進化し、焼酎かすからのポリフェノール抽出効率が従来の50%向上。1リットルの焼酎かすから15mgのポリフェノールが抽出可能となり、国内外での市場展開が加速しました。また、サツマイモ残さの活用率は2010年代の75%から85%に向上し、地域循環型社会のモデルケースとして注目を集めています。

### 課題と今後の展望
2020年代にはパンデミックの影響で焼酎消費量が一時的に減少するなどの課題が発生しましたが、霧島酒造や農協は輸出市場の開拓や新製品開発に注力しています。今後はサツマイモ残さの全体利用率を90%以上に引き上げることを目標に、さらなる技術革新や国際連携が進められる予定です。

この取り組みは、熊本県西合志町を中心とする地域の持続可能性を支えるだけでなく、全国的な循環型社会構築のモデルケースとして国内外から注目されています。

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