「成長の影と戦う - 中国の環境対策」 - 2003年4月
中国では急速な経済成長に伴い、大気汚染や水質汚濁が深刻化し、国民の健康被害が拡大している。特に、石炭を中心としたエネルギー消費が大気汚染の主因となっており、PM2.5や硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)による環境負荷が懸念されている。2003年の調査では、大気汚染が原因で年間約40万人が早死にしていると報告されており、環境問題が人々の生活に大きな影響を及ぼしている。
この状況を受け、中国政府は環境政策を強化し、2003年から2007年の間に約570億元(約1兆円)を環境対策に投じる計画を発表。特に、2003年には「環境影響評価法」を施行し、すべての開発プロジェクトに対して環境アセスメントの実施を義務付けた。これにより、産業開発や都市整備の際に環境への影響を事前に評価し、適切な対策を講じることが求められるようになった。また、大気汚染対策として、排出権取引制度が一部の省で試験導入され、企業による排出削減努力が促進されている。
さらに、都市部では水質汚濁対策として下水処理施設の整備が進められた。特に北京や上海では、高度処理技術を導入し、生活排水や工業排水の適正処理を強化している。また、石炭依存からの脱却を目指し、天然ガスや再生可能エネルギーへの転換が進められており、特に内モンゴル自治区や山西省の炭鉱地帯では、新たなエネルギー政策が実施されている。
しかし、環境政策の実施には課題も多い。環境基準の遵守が徹底されていない地域もあり、特に地方都市や農村部では適切な監視体制が確立されていないケースがある。また、環境対策への投資が急増しているものの、依然として経済成長優先の方針が根強く、一部の企業では排出規制の回避やデータ改ざんの問題が指摘されている。
情報源
- 中国環境政策事情: https://www.ipej-hokkaido.jp/ch/ch105/CH105_Cina.pdf
- 中国の高度成長の陰に潜む エネルギー・環境問題: https://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/612.pdf
- 中国における環境問題: https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2006pdf/20061227050.pdf
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