Friday, October 10, 2025

北陸電力・敦賀火力発電所での木質バイオマス混焼試験 ― 2004年5月

北陸電力・敦賀火力発電所での木質バイオマス混焼試験 ― 2004年5月
2004年、日本は京都議定書の発効を目前に控え、温室効果ガス削減を具体化する政策を急いでいた。電力供給の主力である石炭火力発電は、同時にCO2排出の最大要因であり、その環境負荷をいかに抑制するかが問われていた。その一つの答えとして試みられたのが、木質バイオマスを混ぜて燃やす混焼技術である。再生可能資源を部分的に代替することで、排出量削減と燃料多様化を狙う試みであった。

福井県敦賀市の敦賀火力発電所では、2004年5月から6月にかけて15日間の混焼試験が行われた。試験では石炭の一部を木質チップなどに置き換え、発電効率や設備への影響を検証。結果として、一定割合であれば安定的に運転できることが確認され、CO2削減効果も期待できるとされた。当時、燃料輸入依存や価格変動に直面していた電力業界にとって、地域資源の活用はリスク回避にもつながった。

さらにこの試験は、地域林業との連携や廃材利用の促進といった副次的効果も期待され、国の補助事業やNEDOの研究支援とも結びつき、バイオマスエネルギーの普及を後押しした。敦賀での成果は、のちに全国の火力発電所における混焼導入の先駆けとなり、環境政策とエネルギー安定供給を両立させる象徴的な事例と評価されている。これは、2000年代半ばに日本が模索していた石炭依存からの転換の試金石であった。

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