資源はごみではなく宝へ―神奈川県の廃棄物交換システム―2004年5月
2000年代初頭、日本は循環型社会形成推進基本法の施行を受け、廃棄物削減と資源の有効利用を大きな課題としていた。家電リサイクル法や食品リサイクル法など関連法も次々と整備され、自治体や企業に具体的な対応が迫られていた。そうした背景のなか、神奈川県が打ち出したのが廃棄物交換システムである。
この仕組みは県や主要都市、商工会議所が窓口となり、企業間で発生する廃棄物を別の業種の原料や燃料として再利用できるよう仲介するものだった。製造業から出る金属くずや木材チップが、他産業にとっては資源となり、処理コスト削減と資源循環の両立を実現した。2002年度には年間一万トン近くが交換され、制度の有効性が裏づけられた。
この成功の背景には、京浜臨海部に集積する製造業と県西部の農林畜産業といった多様な産業構造があった。多様性こそが廃棄物を「出す側」と「受ける側」の双方のニーズを結びつけ、循環を可能にしたのである。
当時、全国的に広域的な再資源化の仕組みはまだ整っていなかった。ゆえに神奈川県の取り組みは先駆的なモデルケースとして評価され、後の制度整備や広域リサイクルの議論へとつながっていった。資源を宝に変える発想は、この時代の循環型社会の息吹を象徴していた。
No comments:
Post a Comment