Saturday, October 18, 2025

彩りの環 ― ロハス染色に宿る「自然と美意識の循環」(2006〜2007年)

彩りの環 ― ロハス染色に宿る「自然と美意識の循環」(2006〜2007年)
2000年代半ば、日本社会ではロハスという概念が広まり、生活文化の中に環境意識を取り戻そうとする動きが盛んになった。その象徴が、愛知県一宮市の艶金興業による「ロハス染色」である。食品廃棄物から抽出した天然色素で布を染めるこの技術は、単なるエコ技術に留まらず、人間の感性と自然を再び結びつける思想的実践として注目を浴びた。染料に使われる大豆かすや小豆、栗などは本来捨てられる素材だが、それらが柔らかな色合いとして生まれ変わり、均一性よりも"生きた色"が尊ばれた。ここには、江戸時代以来の「もったいない」精神と、自然の摂理を模倣する日本的美意識が息づいている。
同時期、環境省が推進した3R政策や、ファッション業界のエコデザイン運動とも呼応し、「ロハス染色」は環境配慮と美学を融合した新しい時代の表現として評価された。艶金興業は廃棄物を燃料化し、工場そのものを循環型のモデルへと変革。科学と芸術、倫理とデザインが溶け合う試みとして、持続可能な未来の象徴となった。

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