緑の都を取り戻す手――京都・屋上緑化義務化の始点と広がり(2007年)
2007年前後、京都府と京都市は全国に先駆けて屋上緑化の義務化を導入した。対象は市街化区域内の敷地面積1,000平方メートル以上の新築・改築建物で、屋上面積の20%以上を緑化することを求めるというものだった。背景には、2000年代初頭から深刻化していたヒートアイランド現象がある。京都市は盆地特有の地形ゆえに熱がこもりやすく、夏の夜間気温が下がらない「熱帯夜」の増加が市民生活に影響していた。
国レベルでは、2002〜2004年に政府が「都市ヒートアイランド対策大綱」を策定し、緑化や高反射化を推進していた。京都の制度はこの流れを踏まえ、景観保全と温暖化対策を統合する地方モデルとして実現したものである。保水性の高い軽量緑化基盤が採用され、建物の断熱性能向上と省エネ効果が期待された。
また、寺社建築や商業施設、大学などでも緑化が広がり、京都の伝統的な景観と環境技術が融合。京都議定書の締結地としての使命感も後押しし、緑化は"文化と環境の共生"の象徴となった。屋上の緑は、ヒートアイランドを和らげるだけでなく、古都が未来へ向けて息を吹き返す象徴的な風景となった。
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