近代以降の変容―戦後から2010年代にかけての暴排条例とテキヤ文化の衰退と残響
戦後の混乱期、物資不足を背景に闇市や縁日で活動したテキヤは、生活必需品や娯楽を供給する重要な存在であった。内部規律と信仰を基盤に共同体を維持し、庶民の生活を支える役割を果たした。高度経済成長期には都市化と消費拡大に呼応し、縁日や祭礼の担い手として存在感を高め、地域社会の文化形成にも寄与した。しかし経済の安定と流通網の整備によってその補完的役割は縮小し、やがて「懐かしさを演出する存在」へと移行していった。こうした流れに追い打ちをかけたのが2010年代に全国で施行された暴力団排除条例である。条例は露店や祭礼活動も対象とし、テキヤ文化は表舞台から急速に姿を消すこととなった。従来、地域社会の中で必要とされていた露天商は、社会的には「反社会的勢力」と同一視されやすく�
�り、その活動は大きく制限されたのである。ただし文化的記憶としての痕跡は現在も残り、縁日での綿菓子や射的といった風景は人々の郷愁を呼び覚ます。そこには世代交代や形式化を経てもなお生き続けるテキヤの文化的要素がある。テキヤは単なる商人ではなく、戦後から2010年代にかけて日本社会のもう一つの共同体として歩み、その変容は国家の規制と庶民文化のせめぎ合いを示す歴史の一端でもあった。
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