Sunday, October 26, 2025

表現の爆心地――テリー伊藤と80年代深夜テレビの実験精神(1980年代)

表現の爆心地――テリー伊藤と80年代深夜テレビの実験精神(1980年代)

1980年代、日本のテレビ業界は変革の波に揺れていた。民放各局が視聴率競争に明け暮れるなか、東京12チャンネル(現・テレビ東京)は、深夜という自由度の高い時間帯を使って、実験的な番組づくりに挑戦していた。その最前線に立っていたのが、演出家・テリー伊藤である。

彼がプロデュースした番組群は、既存のバラエティの枠組みを壊し、「やりすぎ」や「放送ギリギリ」の演出で視聴者の感性を揺さぶった。例えば「天才・たけしの元気が出るテレビ」へと繋がる原型的な企画群が、この時期に構想されており、それらは後の「フジテレビ型バラエティ」にも影響を与えることとなる。

当時の若者文化は、新宿や渋谷を中心にサブカルチャーの熱を帯びており、テレビはその拡声器として機能した。芸人や素人を巻き込んだカオス的演出、社会への皮肉、猥雑さを含んだ表現が許されるギリギリを突き進む姿勢は、既成秩序への反抗であり、また"笑いの自由"を追求する闘いでもあった。

このような深夜番組の実験精神は、単なるエンターテインメントではなく、「どこまでがテレビで許されるのか」という公共性と表現の境界線を問う、社会的試みだったとも言える。そしてそれは、後にインターネット時代に現れるYouTuber文化や炎上商法の萌芽でもあった。

東京12チャンネルのその時代は、テレビの歴史における"自由"と"挑戦"の記録であり、テリー伊藤という演出家の才覚が爆発的に開花した瞬間でもあった。

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