危機の中で自ら判断せよ―吉永小百合・昭和四十二年七月
昭和四十年代、日本の芸能界はテレビの普及によって映画産業が衰退し、スターシステムが変わり始めた時代だった。国民的女優として活躍した吉永小百合は、単なる"清純派"の偶像ではなく、女性としての自立を模索する存在へと成長していった。「吉永さんだって、いろんな危機に会うと思う。そのときに自分で判断してやらなくちゃ、それが人間だ」という言葉には、芸能界の管理的構造に抗い、自らの意思で生きる女優像がにじむ。当時の日本社会は高度経済成長に沸く一方で、女性の社会進出が進み、個人の生き方が問われ始めていた。吉永は、そうした時代の価値観の変化を体現する存在だった。彼女が主演した『愛と死をみつめて』や『青い山脈』は、戦後の若者が抱く自由と愛への希求を描き、観客の共感を集めた
。吉永小百合は、昭和という時代の変化のただ中で"従属から自立へ"の精神を体現した女優であり、その生き方は今なお多くの人々に普遍的な共感を与え続けている。
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