Thursday, October 9, 2025

現在、水質汚濁の分野で問題となっているのは、主に閉鎖性水域での富栄養化です。

現在、水質汚濁の分野で問題となっているのは、主に閉鎖性水域での富栄養化です。
富栄養化とは、湖沼、内海、内湾などの閉鎖性水域に窒素やリンが過多に流入することで、赤潮やアオコの発生原因となります。
富栄養化対策としては、ヘドロの浚渫、ろ過による浄化などがこれまでの主流でしたが、浄化の決定打となる技術は出てきていないのが現状です。
今回紹介する株式会社トップエコロジーは、この閉塞していた閉鎖性水域の浄化分野において「水耕生物ろ過法」という画期的な技術をもって登場してきた注目企業です。
同社の工藤鴻基社長にお話を伺いました。
「水耕生物ろ過法」との出会い。
(株)トップエコロジーの設立は1995年12月で、設立3年目を迎えたばかりです。
同社を興すまで、不動産会社やゼネコンなど、どちらかというと開発型の産業で様々な仕事に携わってきました。
「川原の土手をコンクリートで固めたり、不動産の売買をするような仕事を空しく感じ始めていた」ところに、知人の会社が環境事業に進出するに際して協力を要請されました。
これをきっかけに、1993年に環境分野の仕事をスタートさせました。
もともと環境分野では水の浄化に興味がありました。
「水の浄化は膨大な量の処理が前提になるので、電力に頼っていてはコストばかりかかってしまう。
自然の力をうまく利用して浄化すればビジネスとして成立するはずと見込んでいました」。
そこで注目したのが、植物を利用した浄化です。
水生植物を直接入れ、窒素やリンを植物に吸収させる方法は既に知られていました。
この方法を基にいくつか実験を行いましたが、なかなかうまく行かないことがありました。
「これではダメだと思い、全国を回って植物利用による浄水装置を見学しました。
また、浄水の分野で一番問題になっているのが閉鎖性水域であることを知り、湖沼の浄化にチャレンジしたいと思うようになりました」。
そんなときに出会ったのが「水耕生物ろ過法」でした。
水耕生物ろ過法とは、一言で言えば水生植物を中心とする生態系の食物連鎖を利用した浄水法です。
まず湖水中のチッ素やリンなどの浮遊成分を水生植物の根にぶつけることで沈め、サカマキガイなどの微小動物が植物プランクトンを食べ成長します。
ヤゴやドジョウ、カワエビなどの小動物が微小動物を食べて成長するとともに、その排泄物や死骸がバクテリアなどに分解され、植物の栄養分となります。
栄養分として窒素やリンを吸引した水生植物を人間が収穫し、系外に取り出すことで、浄水するという仕組みです。
仕組みを開くと単純そうですが、生態系のシステムを設計するには独自のノウハウが必要になります。
すでに特許を取得していたこの技術に着目した工藤社長は、「水耕生物ろ過法」こそ閉鎖性水域浄化の決定打と考えました。
水にこだわって2000年初頭には店頭公開を目指す。
当時「水耕生物ろ過法」の技術を持っていた(株)バイオックスと個人で独占業務提携契約を結び、営業を開始しました。
最初の共同プロジェクトは、1995年3月に建設省霞ヶ浦工事事務所から受注した土浦ビオパークでした。
ビオパークは、霞ヶ浦の玄関口にあたる土浦港にある親水公園で、面積は約3600平方メートルです。
水面を木製の歩道でいくつかのブロックに区切り、そこで浄化に適した植物である野菜のクレソンやクウシンサイ、セリ、ミントなど9種類を栽培しています。
「見学した人の中には「都会の尾瀬」と言う人もいる」というように、浄水施設というハードなイメージはありません。
近年盛んになっているビオトープの機能を兼ね備えた浄化施設といった感じです。
「ビオパークの特徴は、浄化能力が高いことに加えて、コストが安いこと、景観としても素晴らしいこと、収穫した野菜などを通じて市民交流ができることなど、挙げだしたらキリがないほどです」。
実際、浄化能力は1日1万トンの水を浄化していますが、浮遊物質の70%、クロロフィル濃度(藻類の量を表す)で約60%、窒素・リンでは20-40%という確実な浄化データを得ています。
また親水性も抜群で、自然発生的に「ビオパーク友の会」という市民グループが生まれ、収穫野菜を利用した料理講習会などが開催されるほどです。
コストについては、イニシャルコストが1平方メートル当たり8000円、ランニングコストは1トン処理につき2500円と、他の浄水法と比べて格段に安いです。
また、現在は無料提供しているクレソンなどの野菜についても、有料化すれば収入になります。
この土浦ビオパークが好評を得て、事業としての将来が見えてきた1995年の暮れに、ビオパークの開発者を取締役に迎えてトップエコロジーを設立しました。
環境分野の業務に進出して2年半目にしてついに設立した会社ということになります。
工藤社長の何よりの特徴は話しっぷりの元気の良さです。
技術開発はある程度外部から導入し、営業カで次々にプロジェクトの受注に成功しています。
すでに長野県、千葉県、琵琶湖などから土浦と同様のビオパークの設計·施行を大手ゼネコンと共同で受注しており、売上高も1997年度の3000万円から1998年度は一気に数億円になる見込みです。
「閉鎖性水域の汚濁は世界共通の悩み。
海外への進出も考えて準備しています。
さらに、減反政策などで空いたままの田圃の有効活用法としても、自治体などに売り込んでいくつもりです」。
ビオパークのヒットに力を得て、次に目指しているのが海水を淡水にするシステムです。
すでに琉球大学、東洋建設と組んで沖縄で実験中です。
湖沼の浄化、海水淡水化と水にこだわる理由を聞くと、「世界の淡水の汚濁はますます進み淡水を飲み水に使えなくなりつつあります。
また、ダムの新規建設が泄界的に難しくなるなど、将来的には飲料水は高度経済商品になり、日本でも民間が手掛けるビジネスになっていくと思います。
そのときのことをいつも念頭に置いて事業を進めています」。
壮大な事業を前進するために資金調達の方法として、2000年初頭の店頭公開を考えています。

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