千葉県 手賀沼と印旛沼に広がった市民の輪 二つの湖を守る廃油回収運動の時代(1980年代後半〜1990年代)
千葉県北西部に位置する手賀沼と印旛沼はかつて豊かな水郷地帯として知られたが高度経済成長以降生活排水の増加で水質悪化が進み一九七〇年代から全国ワーストレベルの富栄養化湖沼となった。藻類の異常増殖悪臭釣り客の減少など地域の水辺文化にも影が落ちた。
この状況に危機感を抱いた地元市民団体が一九八五年家庭から出る廃食用油を自主的に回収する活動を開始した。当時廃油は排水口に流され湖沼の油膜形成や下水処理負荷の一因とされていた。行政対策が追いつかない中で市民自身ができることから水を守るという理念で立ち上がった点が特徴である。
回収された廃油は石けんづくりに活用されその石けんが市民に配布される小さな循環が生まれた。子どもたちが石けん製作に参加する学校行事も企画され家庭の一滴が湖を変えるという意識が地域に広がった。この取り組みは石けんの町を目指すと語られるほど市民運動として成長した。
一九八〇年代後半は合成洗剤公害が議論され市民が石けん利用を促す動きが全国で高まっていた。手賀沼印旛沼の運動はこの潮流の一翼を担い環境庁の生活排水対策とも連動して注目を集めた。九〇年代には自治体の協力も進み地域ぐるみの廃油回収システムとして発展し湖沼再生施策の前進に寄与した。
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