巻き戻せる時計と戻らない生命 ベルクソン「創造的進化」 十九世紀末二十世紀初頭
人間が用いる時間は、空間のように区切られ、配置され、必要に応じて戻ることができるものとして理解されている。時計の針が同じ位置に戻るように、過去と現在は並べて比較され、管理や測定に適した枠組みの中で扱われる。しかし生命の時間は、この人間的時間とは本質的に異なる。生命の時間は不可逆であり、同じ状態に二度と立ち戻ることはない。外見や機能が繰り返されているように見えても、その内部では必ず変化が積み重なり、過去は消え去るのではなく現在の内部に折り重なって生き続けている。この時間観の違いは、十九世紀末から二十世紀初頭にかけて、哲学と自然科学の双方で強く意識されるようになった。物理学ではエントロピーや不可逆過程の概念が現れ、時間が単なる可逆的な座標ではないことが示さ
れつつあった。こうした背景の中で、生命を空間化された時間で説明することへの疑問が浮かび上がる。人間的時間は出来事を切り分け、再現し、制御するには有効だが、生命の成長、老化、進化といった現象は、連続的な変化の流れの中でしか理解できない。生命とは時間の中に置かれた存在ではなく、時間そのものとして流れ続ける存在であり、その理解は未来の予測よりも、過去が現在にどのように生きているかを読み取ることにかかっている。
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