Monday, December 1, 2025

セメント製造時のCO2削減技術(1990年代・太平洋セメント)

セメント製造時のCO2削減技術(1990年代・太平洋セメント)
1990年代の日本では地球温暖化問題が本格的に政策課題として浮上した。1997年の京都議定書によってCO2削減が国際的な義務となりエネルギー多消費産業は抜本的な対策を求められた。その中でもセメント産業は特に大きな排出源とされわが国の産業部門のCO2排出量の約5%を占めるといわれた。セメント製造では石灰石を高温で焼成してクリンカーを作る過程で燃料由来のCO2だけではなく石灰石から脱炭酸によってCO2が直接発生する。これは工程上避けられない排出でありいかに減らすかが技術開発の核心となった。
こうした背景のもと太平洋セメントはセメント焼成の省エネ化とCO2排出抑制を同時に達成する新たな焼成プロセスの研究開発を進めた。代表的な取り組みはプレヒーターやプレカルシナーなどの高度化による焼成効率向上である。原料粉末をキルンに投入する前にサイクロン型熱交換器で高温排ガスを利用して予熱しプレカルシナーで部分的に脱炭酸を進めることで主キルンで必要な熱量を大幅に削減できる。これにより燃料消費は少なくなり結果としてCO2排出も削減された。
また石炭や重油に代わる代替燃料の活用も進んだ。廃タイヤ廃プラスチック紙くずバイオマスなどを熱量源として利用することで化石燃料依存を下げ廃棄物処理と製造工程が結びついたゼロエミッション型プロセスが形成された。セメントキルンは高温長時間処理が可能で有害成分を発生させにくいため廃棄物の適正処理装置としても高く評価された。
さらにクリンカーの低温焼成や鉱物組成の最適化も検討され焼成温度を下げる助剤を添加することで必要な結晶構造をより低温で形成させ省エネとCO2削減につなげた。こうした取り組みは日本のセメント産業が世界的にみても高いエネルギー効率を達成する土台となり循環型社会構築の先行事例となった。

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