灰の熱が灯す街 日本 1965年から2025年
焼却発電施設は、ごみを燃やすという処理行為の中から、もう一つの価値をすくい上げる装置である。燃焼によって生まれる高温の熱はボイラで蒸気へと変えられ、その蒸気がタービンを回し、発電機を動かす。かつては単に減量と衛生のために燃やされていた廃棄物が、いまや都市の電力を支える一端を担う。ごみの山は、見えないところでエネルギーへと姿を変えるのである。
日本では一九六五年、大阪市の工場で廃棄物発電が導入されたことが知られる。当初は発電量も小さく、施設内での自家消費が主であった。しかしエネルギー危機や環境意識の高まりを背景に、回収効率を高める技術改良が進んだ。高温高圧ボイラの導入や排熱利用の工夫により、発電能力は向上し、余剰電力の売却も可能となった。
焼却発電はまた、周辺施設への熱供給という形で地域に関わる。温水プールや福祉施設、地域暖房へと蒸気や温水が送られ、都市の裏側にあった清掃工場が、生活を支えるインフラの一部へと位置づけられていく。
ただし、この仕組みは万能ではない。再利用や資源化を優先し、その後に残る可燃ごみからエネルギーを回収するという順序が前提となる。ごみを燃やす熱は、処理の副産物でありながら、都市循環の一部として再定義されつつある。灰の熱が灯す街は、廃棄物とエネルギーの境界を静かに書き換えてきた。
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