VOC対策と印刷業界での実証事業―2006年
二〇〇〇年代半ば、日本では京都議定書の発効を背景に環境規制の強化が進められた。特に揮発性有機化合物(VOC)は光化学スモッグの原因として都市部で深刻な問題となり、2006年の大気汚染防止法改正では事業者に三割削減の目標が課せられた。これを受け環境省は「VOC排出インベントリ検討会」を設置し、業種ごとの排出実態把握と削減策の検討を進めた。なかでもグラビア印刷業界は溶剤使用量が多く、中小企業が中心で対応の遅れが目立ち、経営負担や規制不安が強く指摘された。そこで導入されたのが環境技術実証モデル事業である。ここでは低VOCインキの開発や溶剤回収再利用装置の実証試験が行われ、結果を公開することで事業者の理解と参加を促した。行政、研究者、業界団体の協力体制が整えられ、単なる規制遵�
�を超えて、業界全体が環境対応型へ移行する契機となった。こうした取り組みは消費者や地域社会にも「環境に配慮する産業」としての印象を与え、印刷業界の信頼回復にもつながった。VOC規制は事業者に負担を強いた一方で、技術革新や新市場創出を促す契機となり、のちの環境ビジネス拡大の基盤を築いた点で大きな意味を持った。
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