長江を抱く巨壁――三峡ダムの軌跡と未来（2003年～2025年）

長江を抱く巨壁――三峡ダムの軌跡と未来（2003年～2025年）

三峡ダムは中国湖北省宜昌市に位置する世界最大級の水力発電ダムであり、1993年に建設が開始され、約17年をかけて完成した。2003年6月に貯水が開始され、洪水制御や水力発電、航行改善を目的としたが、約140万人の移住、水質悪化、生態系の変化、地滑り増加などの環境・社会的影響が発生した。

ダムの発電能力は総計2250万kWに達し、中国の電力供給の約2％を占める。経済的には長江の航行条件を改善し、重慶市などの内陸部の発展に貢献した。一方、四川大地震との関連が指摘されるなど、地震活動の影響も懸念された。

2020年代に入り、気候変動による異常気象の増加がダム運用に影響を及ぼしている。2024年には洪水調節のため事前放流が行われたが、「決壊デマ」が拡散する事態も発生した。現在も水質汚染や生態系の変化が課題となっており、森林再生や水質監視強化が進められている。今後はより柔軟な水位調整や環境負荷低減策が求められるだろう。