海の森を創る - 島原鉄工所の間伐材漁礁プロジェクト - 2003年6月
島原鉄工所は、長崎県島原市に拠点を置く企業であり、近年、間伐材を活用した人工漁礁の研究開発に力を入れている。通常、漁礁といえばコンクリートや鉄製のものが主流だが、島原鉄工所の取り組みは、森林資源と海洋生態系の再生を融合させた革新的なプロジェクトである。
間伐材漁礁とは、山林の整備で発生する間伐材を活用して、魚介類の生息環境を向上させるための構造物である。通常、伐採された木材は建築資材や紙の原料として利用されるが、一部は廃棄されることもある。この未利用資源を海に沈めることで、魚類の隠れ家や産卵場として機能させるのが間伐材漁礁の特徴だ。
この技術の珍しい点として、まず挙げられるのは、生分解性の漁礁という点である。コンクリート製漁礁は数十年以上にわたって海中に残るが、間伐材漁礁は一定期間が経過すると自然に分解されるため、海洋環境に与える影響が少ない。漁礁としての機能を果たした後、木材が分解されることで、海の栄養循環にも貢献する。また、森林管理の一環として間伐を行うことで、山の生態系を維持しながら、その資源を有効活用できる。通常は大気中に放出される二酸化炭素を、木材の形で海中に長期間固定できる可能性もある。
さらに、木材はコンクリートに比べて柔らかく、多孔質なため、海藻が付着しやすい。これにより、魚の産卵場や稚魚の隠れ家となり、生態系の多様性を促進する効果が期待されている。漁業への貢献という点でも、人工漁礁の設置により漁獲量の増加が見込まれており、島原の近海で持続可能な漁場を作ることができると考えられている。地元漁業への影響も大きく、持続可能な漁業の実現に貢献する可能性がある。
島原鉄工所のこの取り組みは、地元の漁業関係者と協力しながら進められており、他地域への技術提供も視野に入れている。特に、過剰漁獲や気候変動の影響で魚類の生息環境が悪化している地域での活用が期待されている。現在の研究では、間伐材に特殊な処理を施し、耐久性を向上させる技術の開発も進められており、従来の木製漁礁よりも長持ちし、より多くの魚種に適応できるような改良が試みられている。
島原の海に新たな生命の循環を生み出す、この取り組み。山と海をつなぐ持続可能な技術として、今後の展開が注目される。
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