緊急対策!PCB処理技術 2000 11 76
ボリ塩化ビフェニール(PCB)の処理がようやく本格化の兆しを見せてきた。PCBは不燃性や絶縁性が高く、変圧器などの絶縁油や感圧複写紙などに広く使われたが、68年のカネミ油症事件で毒性が確認された。72年には行政指導により製造・使用が禁止され、使用事業者には厳重な保管が義務づけられた。それまでに国内で使用されたPCBは約5万4000トンといわれるが、通常は原液を希釈して使用するため、処理が必要な電気機器、廃棄物はその数倍の規模にのぼる。
PCBの危険性が表面化した70年代から80年代前半ごろ、通産省は全国39カ所にPCB処理施設の建設を目指したが、当時は焼却処理しか方法がなく、周辺住民からの反対などからすべて断念した。その結果、PCB処理はこれまで遅々として進まなかった。また、事業者の保管状況を監視する仕組みがなかったことも問題で、保管されたままのPCBが一部紛失する事態も起こっている。
また、最近多発している問題として、学校で蛍光灯の安定器が破裂し、中のPCB油が漏れ出すという事故がある。97年以降に文部省が把握しているだけでも全国で10件近く発生しているという。2000年10月にも東京都八王子市と岐阜県の小学校で生徒にPCBが降り懸かるという事故があったばかりだ。これまで日本照明器具工業会などは地方自治体に照明器具の交換を呼びかけてきたが、照明器具の交換には1個当たり2万円前後かかることがネックとなっている。文部省が2000年春に行なった調査では、全国の市町村の4分の1の学校でいまだ使用中だった。PCBを使った安定器は病院や福祉施設の蛍光灯、街灯の水銀灯、トンネルのナトリウムランプなどにも使われており、公共施設だけでも数百万個使われているとみられている。
このため、厚生、文部、環境などの関係省庁は協力して01年度末までをメドにすべての公共施設を対象に、PCB入りの安定器を使った照明器具を安全なものに換えることを柱とする緊急対策案をまとめた。
近年になって新たな高度処理技術が開発され、大手企業の一部が自社保管分の処理に乗り出している。廃棄物処理法の改正により、98年6月から「超臨界水酸化反応」及び「脱塩素分解法」が認められたほか、「廃PCB汚染物、PCB処理物の中間処理方法(厚生省告示)」を一部改正し、中間処理法として「光分解法(熱化学反応、光化学反応など)」、除去方法として分離設備を用いてPCBを十分に除去する方法を追加した。
問題となってくるのが処理のメドが立っていない中小企業が保管している分についてだ。厚生省が2000年7月にまとめた98年のPCB保管状況調査によると、前回調査(92年)の2倍近い約22万台も高圧トランス及びコンデンサが確認された。自民党もこの問題にふれ、この10年という数字は長すぎるとし、法整備を厚生、通産、環境の3省庁に指示。自民党案の「PCB対策特別措置法(仮称)」は前倒し処理のための基本計画といった内容になる見通しで、国、地方公共団体、保管企業の役割を明確化するとともに、新たな補助金措置などの枠組みも設ける予定。2001年の通常国会での法案提出・成立を目指している。場合によっては議員立法化する考えだ
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