Wednesday, April 2, 2025

境界山中埋設記 ―青岩両県不法廃棄の記録(1999〜2007)

境界山中埋設記 ―青岩両県不法廃棄の記録(1999〜2007)

1999年、青森県田子町と岩手県二戸市の県境付近において、産業廃棄物の大規模な不法投棄が発覚した。推定100万立方メートルを超える廃棄物が山中に埋設されていたことから、日本の廃棄物行政の課題が広く注目される契機となった。

廃棄された物質には焼却灰や汚泥、医療系廃棄物などが含まれ、関与企業には三栄化学工業株式会社、三栄興業、縣南衛生株式会社などが挙げられる。廃棄は青森側の谷に行われ、岩手側の土で覆い隠すという、県境を利用した越境的な手法が用いられていた。

廃棄物の排出元は全国で約12000社にのぼり、責任の所在を追及することは非常に困難であった。当時の制度では追跡や再確認が不十分で、多重下請け構造や記録の不備が問題をさらに複雑化させた。

2004年からは青森県・岩手県が共同で原状回復事業を開始し、掘削・撤去・焼却・土壌改良などの作業が進められた。鴻池組などが技術協力を行ったが、廃棄物処理施設の不足や高額な費用などの課題が続いている。

この事件を受けて、排出者責任や監視体制の見直しが進められたが、制度的な課題や運用面の問題は今もなお残されている。本件は、制度の限界と社会全体の環境に対する認識不足を明らかにしたものであり、今後の環境政策を考える上で重要な事例とされている。

現在も一部地域では処理や監視が継続されており、記録と検証の重要性が改めて認識されている。

■ 年表:青森・岩手県境不法投棄事件の経緯

- 1990年代前半〜1999年:不法投棄が継続的に行われる。関与企業による廃棄物の埋設が始まる。
- 1999年12月:青森県が異常な土地改変を発見。調査が本格化。
- 2000年:県境を越えた不法投棄の実態が判明し、社会問題化。
- 2001年:青森・岩手の合同調査で、推定100万立方メートル以上の投棄を確認。
- 2002〜2003年:国・県による復旧計画の策定。
- 2004年:原状回復事業開始。撤去・焼却作業に着手。鴻池組が技術協力。
- 2005年〜2007年:一部処理完了。処理先や費用面の課題が残る。

■ 被害額に関する補足情報

本事件において、公的に「被害額」が明示された記録は現時点では確認されていない。ただし、青森県は本件により発生したとされる経済的影響・風評被害に対応するため、「青森・岩手県境不法投棄事案に係る風評被害対策給付金」制度を設けており、周辺事業者への補填的措置が講じられている。

一方で、青森県が公開している事件の年表や報告資料、岩手県の事業計画書などにおいても、具体的な金額ベースの被害総額は記載されていない。被害の性質が多岐にわたり、直接的損害と間接的損失の切り分けが難しいことが背景と考えられる。

■ 関連情報(資料・組織)

- 関与企業:三栄化学工業株式会社、三栄興業、縣南衛生株式会社
- 排出事業者数:約12000社
- 推定不法投棄量:100万立方メートル以上
- 関連資料提供:
 ・青森県庁 不法投棄アーカイブ
 ・岩手県 環境政策関連資料
 ・RecycleHub 事件の経緯解説
 ・鴻池組 環境復旧の技術と事例
 ・青森県 風評被害対策給付金関連資料

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