Thursday, April 3, 2025

見えない境界線の向こうに―米軍基地と沖縄・環境のいま - 2008年12月

見えない境界線の向こうに―米軍基地と沖縄・環境のいま - 2008年12月

沖縄県は、生活環境保全条例(旧公害防止条例)を全面的に改定し、従来対象外とされていた在日米軍基地を新たに対象に含めた。これにより、米軍基地に起因する騒音・公害・有害物質の流出といった環境問題について、県は立ち入り調査、原因の究明、情報公開の要求といった措置を講じる法的根拠を持つこととなった。

この条例改定は、日米地位協定によって日本側の権限が大幅に制限されてきた現状を打破する一歩であり、地方自治体としての自立的な取り組みとして注目されている。長年にわたり、基地周辺の住民からは水質汚染や騒音被害、健康への影響が訴えられてきたが、実効的な対応ができない状態が続いていた。

今回の改定には、返還された土地の汚染実態調査の明文化、基地起因の環境汚染の未然防止、協定締結による騒音軽減措置の導入などが盛り込まれており、県の責任と行動範囲が大きく拡大された。また、県議会では日米両政府に対し、基地由来の環境問題の責任ある解決を求める付帯決議もあわせて採択された。

県内では有機フッ素化合物(PFAS)による水源の汚染や重金属類による土壌被害の懸念が高まっており、今回の条例改定はそのような状況に対する住民の不安への明確な応答となっている。とりわけ、返還予定地の利活用において、安全性の確保が地域の再生の鍵となることは言うまでもない。

この動きは、他の基地所在自治体にとっても一つのモデルとなる可能性があり、全国的な制度整備と環境権の保障をめぐる議論の加速にもつながると期待されている。一方で、実効性を確保するためには、県の監視体制や国との協議の実際の運用が今後問われることになる。

沖縄という「国境なき前線」の地で、住民の命と暮らしを守る条例が静かに息づき始めた。この一歩は、基地と隣り合わせで生きる人々の長年の願いに対する、ようやくの応答である。

【関連情報(出典)】
・日本共産党機関紙『赤旗』(2008年12月20日)
・沖縄県公式文書:生活環境保全条例の改定資料
・日本弁護士連合会:日米地位協定と環境権に関する提言

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