し尿の海洋投棄問題-1999年9月から2020年代まで
1998年度、日本国内で212万キロリットルのし尿が海洋へ投棄されていました。この量は約80万人分の年間排出量に相当し、東京湾や大阪湾、伊勢湾などで海洋汚染が深刻化。厚生省は、市町村への処理場整備指導や適切な処理体制構築を促進しました。
2010年代の状況
2010年代には、環境保護への意識が高まり、海洋投棄の削減が加速しました。東京都では、下水道普及率が98%を超え、ほぼ全量が陸上で処理されるように。また、大阪市ではバイオガス化技術が導入され、し尿をエネルギー資源として活用するモデルが確立。地方では、荏原製作所の浄化槽が活躍し、下水道未整備地域でも適切な処理が進行しました。一方、北海道や離島地域では陸上処理のコスト負担が課題となり、自治体間での支援が議論されました。
2020年代の現状
2020年代にはし尿海洋投棄はほぼ完全に廃止され、海洋環境への負荷は大幅に軽減。厚生省の指導のもと、川崎重工業のバイオガスプラントや荏原製作所の高度処理施設が導入され、地域ごとの処理能力が向上しました。2023年には、環境省が海洋投棄ゼロを達成したと発表。全国的な普及が進んだ結果、し尿は肥料やバイオガスとして再利用され、循環型社会の構築に貢献しています。
数値と成果
1998年には年間212万キロリットルだった海洋投棄量が、2010年代半ばには10万キロリットル以下、2020年代初頭にはほぼゼロに。技術革新と政策の成果により、沿岸地域の漁業や観光産業にも良い影響を与えています。
課題と展望
離島や山間部では引き続き陸上処理設備の整備が課題で、移動式処理施設の導入が検討されています。また、し尿処理の再生資源利用を拡大し、バイオガス供給を地域エネルギーとして活用する取り組みも進行中です。今後は、国内だけでなく周辺国との協力による海洋環境保護も視野に入れた取り組みが期待されています。
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