Thursday, April 3, 2025

静謐の雪に咲いた黒い火花 札幌・暴力団抗争の記録(平成2年1月〜3月)

静謐の雪に咲いた黒い火花 札幌・暴力団抗争の記録(平成2年1月〜3月)

平成2年1月、札幌市の静けさを切り裂く凶報が走った。山口組系誠友会の初代総長・石間春夫が、帰宅中に何者かに襲撃され命を落としたのだ。札幌を拠点に長く裏社会に君臨してきた石間総長の死は、道内の暴力団勢力に大きな衝撃を与え、誠友会と、関東・東北に根を持つ維新天誅会との対立を決定的なものとした。

報復の狼煙は、南六条にあるビルへの突入という異常な形で現れる。誠友会側の若手構成員がショベルカーを操り、維新天誅会関係者の拠点とされるビルに体当たりしたのだ。鉄の巨体が札幌の雪をかき分けてビルの玄関に突入し、硝子が砕け散る光景は、札幌という街が戦場に変わったことを市民に突きつけた。

この事件を皮切りに、すすきの周辺では発砲や襲撃が相次ぎ、道警はただちに札幌中心部を特別警戒区域とし、大規模な取り締まりに乗り出した。抗争は3月まで断続的に続き、市民の生活と心理に暗い影を落とした。

最終的に、両組織の幹部逮捕や警察の強制介入によって抗争は鎮静化したが、この一連の事件は北海道の暴力団勢力図に大きな変化をもたらし、誠友会を含む山口組系勢力の道内での立場を強める結果となった。そして何よりも、雪に覆われた都市で起きたこの抗争は、平穏な日常の下に潜む暴力の現実を、否応なく浮かび上がらせたのである。

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