Thursday, April 10, 2025

『闇に染まる海からの十人――ムンバイを止めた三日間の記録』2008年11月

『闇に染まる海からの十人――ムンバイを止めた三日間の記録』2008年11月

2008年11月、インド最大の都市ムンバイは、たった10人のテロリストによって三日間にわたり混乱の渦へと叩き込まれた。パキスタンに拠点を置くイスラム過激派ラシュカレ・トイバ(LeT)はGoogle Earthや観光ガイドなどの公開情報を用いて入念に作戦を練り、衛星電話やインターネットを通じてパキスタン国内の指揮者と連携しながら都市の要所を同時に襲撃。チャトラパティ・シヴァージー駅、タージ・マハル・ホテル、オベロイ・ホテル、レオポルド・カフェ、ユダヤ人施設ナリマン・ハウスが標的となった。

この事件により174人が死亡、300人以上が負傷し、交通・通信・経済の中枢が麻痺。襲撃の残虐さに加え、現代テクノロジーを駆使したその手口は従来のテロ観を根底から覆した。唯一の生存者であるアジャマル・カサブの証言から、パキスタン軍情報機関との関係性や訓練キャンプの存在が明るみに出て、国際社会に衝撃を与えた。

さらに3年後にはフィリピンでAT&Tをハッキングし不正資金をLeTに送っていた容疑者が逮捕され、テロ資金の裏ルートが明るみに出た。海からやってきたわずか10人の武装集団は国家の境界や都市の堅牢さを容易にすり抜け、21世紀型の脅威の先駆けとなった。その爪痕はいまも世界の記憶に刻まれている。

No comments:

Post a Comment