### 環境 飽食の影に捨てられる膨大な食糧―食品廃棄物1900万トンの衝撃 2002年
2002年当時、日本は世界有数の食料輸入国でありながら、国内での食品廃棄量は年間1900万トンに達していました。これは世界全体で飢餓に苦しむ人々の存在と対照的であり、国際社会からも「飽食の裏に潜む浪費」として問題視されました。特に先進国の中でも日本は食料自給率が4割程度に低迷していたため、多くを海外に依存しつつ、大量に廃棄しているという二重の矛盾を抱えていたのです。
背景には、流通や小売段階での「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習がありました。これは製造から消費までの期間を三等分し、その最初の3分の1を過ぎた食品は流通に乗せない、という仕組みです。結果として品質には問題のない商品が大量に返品・廃棄され、社会的損失を生み出していました。加えて、外食産業の拡大や家庭での過剰調理も食品ロスを押し上げました。
こうした大量廃棄は資源の浪費であると同時に、環境破壊に直結しました。食品廃棄物の焼却はCO2排出を増大させ、埋立はメタンガス発生による温暖化を助長しました。また処分コストも自治体財政を圧迫し、社会全体の持続可能性を揺るがす要因となりました。
一方で、2001年に施行された食品リサイクル法は、事業者にリサイクル率の向上を義務付け、飼料化や肥料化を進める仕組みを整え始めていました。例えばパンくずや残飯を飼料に加工するリサイクルループが各地で試行され、循環型社会への転換の萌芽が見られました。しかし制度の実効性はまだ十分ではなく、社会全体の意識改革が求められていました。
この「食品廃棄物1900万トン」という数字は、単なる国内問題ではなく、地球規模の食料資源配分の不均衡を象徴していました。2002年の論調は、飽食社会の背後にある浪費と環境負荷を直視することを迫り、日本が循環型社会と国際的連帯をどのように結びつけるかを問うものであったのです。
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