環境 バイオマスタウン構築の推進(2007年前後)
2007年前後、日本では京都議定書の第一約束期間を控え、温暖化対策と地域振興を両立させる必要性が高まっていた。農林水産省は「バイオマスタウン構想」を掲げ、地域資源を循環的に活用する取り組みを全国展開した。生ごみ堆肥化、メタン発酵によるバイオガス化、木質バイオマス燃料利用、廃食油からのバイオディーゼル精製、飼料米を原料としたエタノール実証など、多様な技術を組み合わせる分散型のモデルが推奨された。自治体ごとに適合する技術が選択され、地域自立型のエネルギー供給と環境負荷低減を両立させる仕組みが模索された。
滋賀県愛荘町では住民協力で廃食油を回収し、町営バスや農機に供給。北海道下川町では森林資源を生かした木質バイオマス地域暖房を整備し、林業再生と雇用を実現。岐阜県恵那市では飼料米や残渣を用いたエタノール実証が進められ、熊本県水俣市では公害克服の経験を活かして食品廃棄物や有機資源の堆肥化とエネルギー化を推進した。さらに愛媛県ではみかんジュース搾りかすからエタノール生産量を試算し、食料・飼料との競合も議論された。
これらの事例は単なる温暖化対策にとどまらず、地域社会の再生、産業振興、社会的連帯を再構築する実践として評価された。国が制度と技術メニューを提示し、地方が地域資源の最適解を模索することで、循環型社会への移行を具体化する象徴的な取り組みとなった。
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