環境 バイオマスタウン構築の推進(2007年前後)
2007年前後は京都議定書の第一約束期間(2008〜2012年)を目前に控え、CO₂排出削減と地域振興を両立させる動きが強まっていた。農林水産省は「バイオマスタウン構想」を全国展開し、約1か月で全国9か所を巡る説明会を実施、自治体・事業者・住民に政策の方向性を直接伝えた。背景には、業務その他部門のCO₂排出が基準年比+44.6%に達するなど温暖化対策の遅れと、循環型社会への移行を急ぐ必要性があった。
バイオマスタウンの基本は、地域で発生する生ごみや木質資源、廃食油、農業残渣などをエネルギーや資材に変換し、地産地消する循環型モデルである。生ごみ堆肥化やメタン発酵によるバイオガス化、木質バイオマスの燃料利用、廃食用油を精製したBDFの活用、飼料米を原料としたエタノール実証といった多様な技術が自治体ごとに組み合わされた。小規模エタノール化プラント開発も進み、農村部に適した分散型エネルギー供給システムの可能性が検討された。
その象徴的事例として、滋賀県愛荘町、北海道下川町、岐阜県恵那市、熊本県水俣市が挙げられる。愛荘町は住民協力で廃食油を回収し、町営バスや農業機械にBDFを供給。下川町は森林資源を活用した木質バイオマス地域暖房で林業再生と雇用確保を実現した。恵那市は飼料米や農業残渣をエタノールに転換する実証を進め、水俣市は公害克服の経験を踏まえ食品廃棄物や有機資源を堆肥化・エネルギー化する循環事業を導入。いずれも環境負荷低減と地域再生を兼ね備えた取り組みとして注目された。
さらに愛媛県ではみかんジュース搾りかす約2万トンからエタノール生産量を試算し、食料・飼料との競合リスクを議論するなど、地域資源ポテンシャルを可視化する動きも広がった。これらの事例は、バイオマスタウンが単なる環境対策にとどまらず、地域アイデンティティや社会的連帯を再構築し、農業・林業の再生と温暖化対策を同時に実現する基盤であることを示した。国は制度設計や技術メニューを提示し、地方は地域資源の最適な組み合わせを模索する——その往復こそが2007年前後のバイオマスタウンを特徴づけていた。
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