環境 大国の矛盾を資源へ変える中国の排出権取引戦略(2007年前後)
2007年前後、中国は急速な経済成長を遂げ、世界最大の温室効果ガス排出国となった。石炭火力依存は70%以上に達し、都市部の大気汚染は深刻化。他方で経済成長率は年10%前後を維持し、エネルギー需要は止まらず拡大していた。この成長と環境制約の矛盾を克服するため、中国は京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)に活路を見出した。風力や小水力、メタン回収、バイオマス発電など数百件に及ぶプロジェクトを展開し、全世界の登録案件の約半数を占める規模に成長。排出権取引によって年間30億ドル規模の外貨収入を確保し、気候変動対策を経済成長の新しい手段へと転換した。
また国内では循環型経済促進法(2008年施行)や省エネ法改正が進められ、産業高度化と省エネ政策が国家戦略の柱に据えられた。こうした制度整備と排出権収入の活用によって、再生可能エネルギー開発や省エネ技術導入が後押しされ、環境対策は「制約」ではなく「成長の糧」と位置づけられた。
このように2007年前後の中国は、国際的な批判を逆手に取り、排出権市場を経済戦略の一部に組み込んだ。環境を資源と捉える姿勢は、その後の低炭素都市モデルや全国排出権市場(2021年正式稼働)へと継承され、現在の中国の気候戦略の基盤を形づけた。
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