### 地域に根ざす環境挑戦 ― 水沼タイルの取り組み 栃木県芳賀町 1990年代後半

### 地域に根ざす環境挑戦 ― 水沼タイルの取り組み 栃木県芳賀町 1990年代後半

1990年代後半、日本は循環型社会への転換を迫られていた。バブル経済崩壊後の停滞期にあって、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄のモデルは限界を迎え、産業廃棄物の増加や不法投棄問題が深刻化していた。1997年の京都会議（COP3）は地球温暖化防止の国際的な合意を形成し、企業にも環境対応が強く求められる時代が到来した。そうした社会背景のなかで、地方の中小企業も独自の環境技術を模索し始めた。

栃木県芳賀町の水沼タイルは、そうした時代の波を敏感に受け止めた企業であった。タイルや建材の製造は本来、大量のエネルギーを要し、廃材の再利用が難しい分野とされていた。しかし同社は建設現場から出る陶器くずや廃材を原料として活用し、リサイクル型のタイル製造に挑戦した。廃棄物を製品へと再生する試みは、資源循環と環境負荷低減を同時に実現するものであり、産業廃棄物処理問題に光を投げかけた。

当時、北関東地域は自動車産業を中心に工業集積が進み、同時に環境負荷の高まりが指摘されていた。芳賀町も工業団地を抱え、地域経済の発展と環境課題の狭間に立たされていた。その中で水沼タイルの取り組みは、地域発の循環モデルとして注目を浴びた。

同社の姿勢は単なる製品開発にとどまらず、行政や建設業者との協力を通じて新しい物流と廃棄物利用の仕組みを築こうとするものであった。これは当時盛んに議論されていた「静脈物流」や「ゼロエミッション構想」とも呼応し、地方企業が全国的な環境潮流と響き合う象徴的な事例となった。

水沼タイルの試みは、芳賀町というローカルな場から発信されたものでありながら、日本全体が直面していた循環型社会への転換を体現するものでもあった。地域に根ざした小さな挑戦が、時代の大きなうねりと共鳴していたのである。