Friday, August 22, 2025

宮古島のサトウキビ活用史-1996年から2020年代まで

宮古島のサトウキビ活用史-1996年から2020年代まで

1996年の状況
宮古島(現・宮古島市)では、地域資源を活用した循環型社会の構築が進められ、サトウキビの搾りかす(バガス)の有効活用が注目されていました。この年、平良市(現在の平良地区)や城辺町を拠点に、年間約10000トンのバガスを処理する工場の建設が計画されました。このプロジェクトは地元の宮古製糖株式会社と大手製紙会社の王子製紙が共同で進め、バガスをパルプや有機肥料として再利用する構想が立てられました。

さらに、焼酎粕や牛肥と組み合わせた「エコロジーパーク構想」が下地町や与那覇地区で進行中でした。リグニンやセルロースといったバガス由来の成分が堆肥化に利用され、土壌改良に役立てられました。PA法(環境保全優先の計画実施法)に基づき、環境影響評価が実施され、プロジェクト全体で二酸化炭素排出量を年間約2000トン削減する目標が掲げられました。

2020年代の現状
2020年代に入ると、宮古島市の製糖工場では年間約300000トンのサトウキビが処理され、その副産物として約90000トンのバガスが発生しています。このバガスは以下の用途で利用されています:

1. エネルギー利用: バガスは製糖工場のボイラー燃料として利用され、工場のエネルギー需要の約60%を賄っています。
2. 堆肥化: バガスの一部は堆肥化され、地元農家に提供されています。これにより、化学肥料の使用量を20%削減し、土壌の有機質含有量を増加させています。

地元の宮古製糖株式会社は、バガスのさらなる有効活用を目指し、バイオマス燃料や高機能パルプの製造を検討しています。また、沖縄電力株式会社と連携し、バガスを原料とするバイオマス発電の実証実験が城辺町で行われています。この発電施設では年間約30000世帯分の電力供給が見込まれており、地域のエネルギー自給率向上に寄与しています。

環境への影響と課題
これらの取り組みにより、年間約50000トンの二酸化炭素排出削減が実現されています。加えて、バガス由来の堆肥を使用することでサトウキビの収量が10%以上向上し、農業生産性が飛躍的に高まりました。しかし、さらなる技術革新と安定的な供給体制の確立が課題とされています。

今後の展望
宮古島市は、研究機関や企業と連携してバガスの新たな用途を開発することに力を入れています。たとえば、池間島や多良間島などの離島から供給されるサトウキビも含めた広域的な資源管理が進められています。これにより、宮古島が持続可能な地域モデルの先駆けとなり、他地域への展開が期待されています。

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