環境 北の港に芽吹く緑の未来—北海道苫小牧市工業地帯環境改善計画 1996年6月

環境 北の港に芽吹く緑の未来—北海道苫小牧市工業地帯環境改善計画 1996年6月

1990年代半ばの苫小牧市は、石油・製紙・化学工業を中心とした重化学工業の港湾都市として発展してきたが、長年の産業活動により港湾周辺の大気・水質汚染が顕在化していた。特に製紙工場からの排水に含まれる有機物や漂白工程で発生する化学薬品、大型タンカーからの油分流出が、港湾海域の水質悪化と底質汚染の要因となっていた。さらに国際的にもISO14000シリーズの導入が進み、企業には環境マネジメントの強化が求められていた。

この計画では、緩衝緑地帯の拡充が重要な柱となった。防塩性樹種や常緑広葉樹を組み合わせた植栽により、防風・防塩・粉じん飛散防止を図るとともに、港湾景観の改善にもつなげた。緑化基盤には透水性土壌や改良材を用い、沿岸特有の強風や潮害に耐える構造が採用された。

排水処理技術では、従来の活性汚泥法に加えて、砂ろ過、活性炭吸着、高度酸化処理（オゾンや紫外線酸化）が導入され、CODや色度、SSの除去率を大幅に向上。油分除去には油水分離槽や浮上分離装置のほか、遠心分離システムを追加して高効率化を図った。加えて、港湾に入港する船舶に対してバラスト水の適正処理を義務付け、外来生物や油分流出の抑制も進められた。

海域改善策としては、汚染堆積物の浚渫・処分が計画され、同時に港内の水循環を改善するための潮流導入施設も検討された。さらに、オンライン水質監視システムを設置し、pH、溶存酸素、油分濃度、濁度などをリアルタイムで監視。異常が検知された場合には自動的に警報を発し、港湾管理事務所や関係企業が迅速に対応できる体制が整えられた。

これらの施策は、単なる公害対策を超えて、港湾機能の維持と環境保全の両立を実現するモデルケースとして全国的に注目され、同時期の室蘭市や新潟東港の環境改善計画にも技術的影響を与えた。