Wednesday, August 13, 2025

環境 風が未来を紡ぐ—葛巻町風力発電の物語—1996年6月

環境 風が未来を紡ぐ—葛巻町風力発電の物語—1996年6月

1996年当時、日本ではエネルギー供給の多くを化石燃料に依存し、地球温暖化や酸性雨が国際的課題として強く意識され始めていた。そんな中、岩手県葛巻町は酪農地帯として知られる高原の町でありながら、環境保全と地域振興を両立させるため、新型小型風力発電機の導入を決断した。この時代、再生可能エネルギーはまだ全国的には普及途上で、特に地方自治体による主体的な導入は稀であった。葛巻町が選んだ設置場所は、通年を通じて安定した風が吹く高台で、発電効率を最大化するための立地条件が整っていた。新型風力発電機は、既存機より低風速でも発電可能な翼形状と、耐寒・耐雪仕様の設計を特徴とし、厳しい東北の冬にも対応できる点が画期的であった。発電した電力は町内の公共施設に優先的に供給され、余�
�分は電力会社に売電することで維持管理費の一部を賄う計画が立てられた。この仕組みは、地域経済への還元とエネルギー自給の両面で先進的であり、全国の自治体関係者や環境団体から視察が相次いだ。また、町は設置後も風況データの収集を継続し、発電量や経済効果を分析して導入拡大の可能性を探った。こうした取り組みは、地方から始まる分散型エネルギー社会のモデルケースとして注目され、再生可能エネルギー推進の機運を高める一因となった。

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