Monday, August 25, 2025

環境 食の裏側を支える技術 ― 有機性排水処理の革新と関連技術 1999年

環境 食の裏側を支える技術 ― 有機性排水処理の革新と関連技術 1999年

1990年代、日本の食品産業は大量生産と多様化する消費ニーズに応える一方で、大量の有機性排水を排出し続けていた。醸造、乳製品、食肉加工、飲料などの工場から出る排水は高濃度のBOD・CODを含み、河川や沿岸域に流入すれば富栄養化や赤潮の原因となる。従来の活性汚泥法は普及していたものの、大規模施設では維持コストが高く、汚泥発生量の多さが問題視されていた。

こうした状況で1990年代後半に注目されたのが、省エネ・低公害型の新処理技術群である。例えば膜分離活性汚泥法(MBR)は、微細な膜フィルターを通して処理水を分離するため、高度な水質を得られ、工場内での再利用が可能となった。加えて、汚泥の沈殿槽が不要なため省スペース化にもつながった。さらに嫌気性処理(UASB反応槽など)では、有機物をメタン発酵で分解し、バイオガスとして回収できるため、エネルギー源として再利用できる点が革新的だった。

関連技術としては、高度酸化処理(オゾン処理やFenton反応)により難分解性有機物を分解する方法、回転円板接触法や流動床法といった省エネルギー型生物処理、さらには逆浸透(RO)膜やナノろ過膜を利用した水リサイクル技術も普及し始めた。これらは単独ではなく組み合わせて用いることで、工場ごとの水質やコスト条件に応じた最適システムを構築できた。

また、処理副産物である汚泥を堆肥や飼料に利用するリサイクル技術も試みられ、廃棄物ゼロを目指す「ゼロエミッション」の流れと合致した。1997年の京都議定書以降、省エネ・省資源への要請が高まった時代背景もあり、これらの技術は単なる環境対応策にとどまらず、企業競争力を左右する戦略技術とみなされるようになった。

総じて、1999年前後の有機性排水処理技術の革新は、環境負荷削減と資源循環を同時に可能にする多様な技術の統合により、「食品産業の持続可能性」を切り開く画期的な動きであった。

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