Tuesday, August 26, 2025

環境 食の裏側を支える革新 ― 有機性排水処理技術の進展 1999年

環境 食の裏側を支える革新 ― 有機性排水処理技術の進展 1999年

1990年代の日本では、食品産業の成長に伴い、工場から排出される有機性排水が深刻な環境問題として注目されていた。発酵食品や飲料、乳製品工場などからの排水は高濃度のBODやCODを含み、河川や沿岸域での水質汚濁、悪臭、赤潮の原因となった。従来主流であった活性汚泥法は一定の成果を上げたが、汚泥発生量が多く維持費も高く、食品企業にとって大きな経済的負担となっていた。そこで、省エネルギーかつ低公害で高効率な新技術が求められた。

注目された膜分離活性汚泥法(MBR)は、微細な膜で固液分離を行い安定した水質を確保、処理水を工場内で再利用する循環システムを可能とした。また、嫌気性処理(UASB反応槽など)は有機物を分解する過程でメタンガスを生成し、エネルギーとして再利用できる点で画期的だった。さらに、オゾン酸化やFenton反応などの高度酸化処理技術、逆浸透膜(RO膜)を利用した再利用水確保、回転円板接触法などの省エネ型技術も導入され始めた。

これらの技術は、工場ごとの排水特性やコストに合わせて組み合わせることで最適なシステムを構築でき、廃棄物の削減と資源循環に貢献した。背景には、1997年の京都議定書による温室効果ガス削減の国際的合意があり、国内でも環境技術の開発と規制強化が進んだことがある。こうした技術革新は、単なる規制対応を超え、食品産業の持続可能性を高める基盤となり、1999年当時「循環型社会」の実現に向けた大きな一歩となった。

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