Wednesday, August 27, 2025

環境 名古屋市「ごみ非常事態宣言」 ― 危機から始まる市民参加と技術革新 1999年

環境 名古屋市「ごみ非常事態宣言」 ― 危機から始まる市民参加と技術革新 1999年

1990年代末、日本の都市部は急速に拡大するごみ問題に直面していた。名古屋市では市内3カ所の最終処分場が残余年数わずか2年と推計され、都市がごみに埋もれる現実的危機が迫っていた。高度経済成長期以降の大量消費社会の弊害に加え、新規処分場確保の困難さが状況を悪化させていた。こうした背景から市は異例の「ごみ非常事態宣言」を発令し、市民と事業者に分別徹底を呼びかけた。この宣言は従来の行政主導型施策を超え、市民参加を前提とした政策転換を象徴していた。

発令後1週間の調査では、市収集ごみが前年比5.1%減、事業者持ち込みごみが15.91%減、合計で約8.7%削減という即効性のある成果が得られた。短期間でこれほどの効果が出たことは、市民や事業者が危機意識を共有し、行動変容が迅速に進む可能性を示すものであった。同時期、容器包装リサイクル法(1995年施行)に基づく分別収集やPETボトル・缶・紙パックの循環システムが整備され、光学選別機や磁力選別機といったリサイクルプラント技術も導入されていた。これらの技術革新が宣言の実効性を高めた要因となった。

さらに、コンポスト化施設やバイオガス化装置による生ごみ資源化も進み、事業系ではリターナブル容器や簡易包装など排出抑制の工夫が拡大した。名古屋市の事例は、危機を契機に市民意識改革と技術導入を結びつけ、循環型社会形成に向けたモデルとなった。

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